アセンド社資金調達の背景~ゲスト/アセンドCEO日下氏×GCP湯浅・阿部~
こちらは、2023年12月8日にGCP House内で配信したPodcastの書き起こし・一部編集した記事となります。
アセンド社日下氏とGCP湯浅の出会い
GCP阿部)今回は、グロービスキャピタルパートナーズも直近投資をさせていただいた、アセンド社の代表である日下さんをお迎えしています。本日は、自己紹介に始まり、アセンド社の事業内容、プロダクト、そして組織についてお話を伺います。弊社からは、担当キャピタリストであり、GPの湯浅も参加しています。日下さん、湯浅さん、よろしくお願いします。
日下氏・GCP湯浅)よろしくお願いします。
GCP阿部)それでは、日下さんから簡単な自己紹介と、これまでのキャリア、そして現在の企業経営についてお話しいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
日下氏)アセンド代表の日下です。1990年生まれの33歳で、北海道江別市出身です。大学から東京に来ました。
学生時代は大学院まで一貫して政治哲学を学んでおり、25、26歳まで本ばかり読んでいましたね。
社会人になってからは、抽象的な学問とは対照的に、実務に近いことをしたいと思いました。そこで、PwCコンサルティング合同会社でサプライチェーンのコンサルタントとして2年間働き、SAPの導入、調達組織の改革、購買資材のコスト削減などを担当しました。
その後、もう少しマクロな視点で物事を考えたいと思い、野村総合研究所のシンクタンク部門に移りました。そこで、国土交通省や業界団体と協力して、日本の物流の10年後をデザインするような仕事を2年ほど行いました。
2020年3月に現在の会社を設立し、トラック運送業に特化したバーティカルSaaSである「ロジックス」という製品を提供しています。
GCP湯浅)面白いですね。大学・大学院で哲学を学び、今はトラック輸送業という全く異なる分野にいらっしゃいますね。この記事の読者の方々にお伝えしますと、日下さんの背景には何百冊もの本が並んだ大きな本棚があり、その前に日下さんが会社のユニフォームを着て座っていらっしゃいます。まさに日下さんの人生のストーリーがこの映像に表れているように感じます。
日下氏)ありがとうございます。確かにそう言われてみると、インタビューのために用意した甲斐がありましたね。
よくそのギャップについて指摘されます。投資家の方も社員の方も、運送業を相手にしているので泥臭いコミュニケーションもしますが、一方で戦略や組織の部分については非常に合理的にアプローチしています。この対照的な側面のバランスが、私のユニークなポイントだと考えています。
GCP阿部)おそらく、取引先との初めてのミーティングでは、この意外性に驚かれることも多いのではないかと想像します。しかし、これこそが日下さんの魅力の一つなのかもしれません。
GCP阿部)ちなみに、湯浅さんと日下さんの最初の出会いについて、何か興味深いエピソードがあればぜひお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
GCP湯浅)きっかけは、2023年2月にICCで日下さんが登壇されたことでした。私はそれを拝見して、非常に強く心を打たれました。個人的にとても良いと感じ、たしかピッチコンテスト中だったと思いますが、すぐにメッセンジャーでご連絡を差し上げ、「ぜひ詳しくお話ししたい」とラブコールを送りました。
その後、いろいろとディスカッションを重ね、今年の秋に投資をさせていただく運びとなりました。
元々、巨大産業のDXに興味があり、物流は確実にその一つだと考えていたので、このような機会を常に探していました。しかし、なかなかご縁がなかったところ、2月に日下さんの登壇を見て「ビビッと」来たという感じですね。
GCP阿部)ビビッときた、まるで一目惚れのような感じですね。日下さんから見た景色はどうでしたか?
日下氏)2月のときは、まさに我々がシリーズAのファイナンスをするためにピッチコンテストに参加していました。当然、そこでコミュニケーションを取りたい方々をリストアップし、ベンチャーキャピタルの皆様との接点を探っていました。その中で一番に湯浅さんとお話ができて、非常に良かったと思っています。
実は私個人的には、3、4年前から一方的に湯浅さんのことを存じ上げていました。私がスタートアップについて知った最初のイベントが、麹町のグロービスのオフィスで行われたものでした。そこで湯浅さんが登壇され、実際のメンタリングの様子についてインタビュー形式で話をされていました。
そのときの湯浅さんの印象が非常に鮮明に残っています。起業家に対して非常にケアをする一方で、自分の仮説をしっかり持ってお話をされる方だと感じました。その時、まだ若かった私は、いつかこういう方に投資していただけるような会社になりたいと強く思ったのを覚えています。
実際にシードラウンド、プレシリーズAラウンドを重ねていく中で、投資家として期待されているのは、いかに我が社の視座を上げていけるかという1点だと考えています。私が尊敬する先輩起業家たちも、厳しい投資家をしっかり置いて、その人と一緒に会社を大きくしていくことを目指していると聞きます。
デューデリジェンスの過程での議論を通じて、改めて湯浅さんがいてくださることで、我が社も一段レベルアップできるのではないかと感じました。
GCP湯浅)我々の審査プロセスでも、日下さんがスタートアップを進めていく上で必要なリソースをどれくらい巻き込んでいけるのかというところを拝見させていただきました。そこでも日下さんの能力の高さが際立っていたと思います。
確か、ハーバード大学が定義している起業家精神(アントレプレナーシップ)の定義は、「現在自分が保有している資産に関わらず、機会を追求し続けること」というものです。つまり、今自分が持っていない資産も含めて、それを獲得しに行くことも含めて、市場機会を追求し続けることです。
日下さんは、まさにそういう起業家精神を持ち合わせている方だと思います。
日下氏)ありがとうございます。そのように評価していただいて嬉しいです。自分自身もそこはすごく意識しています。スタートアップの経営では、よく言われるように、社長の器が会社の限界を決めるということを実感しています。
自分が描ける構想以上に会社は大きくならないと思いますし、特に我々のように物流業界全体の価値を上げていきたいというミッションを持つ場合、自分がいかに高い視座を持っているかが最も重要な論点になります。
そのため、採用はもちろんのこと、外部のアドバイザーの方々、大学の先生、業界の方々、ファイナンスに強い人、組織開発に強い人など、多くの方々に関わっていただいています。月に1、2回じっくりとディスカッションをさせていただき、その都度成長していくというプロセスを大切にしています。これは私の強みの一つだと考えています。
これまでのお話でも既に何点か触れていただいたと思いますが、改めてアセンド社の事業、市場環境、プロダクト、そして組織についてお話しいただけますでしょうか。
物流業界の価値を最大化するSaaSプロダクト、「ロジックス」
GCP阿部)これまでのお話でも既に何点か触れていただいたと思いますが、改めてアセンド社の事業、市場環境、プロダクト、そして組織についてお話しいただけますでしょうか
日下さん)私たちは「物流業界の価値を最大化する」というミッションを掲げて事業を展開しています。現在の主な事業は、トラック運送会社向けのSaaSサービスと、物流に関わるコンサルティングの二本柱です。
SaaSサービスである「ロジックス」は、トラック運送会社の業務を全面的にサポートする製品です。具体的には、受注から配車、請求業務、車両管理まで、トラック運送会社の全ての業務をオールインワンで提供しています。
この製品の特徴は、単に業務を効率化してコスト削減するだけでなく、生成される物流データを活用して、さらなる改善を可能にする点です。例えば、トップラインの改善や不採算ルートの特定と利益率の向上などが挙げられます。
損益計算書(PL)に直接的な影響を与えられるところまでをスコープにしているSaaSであることが、大きな特徴だと考えています。
GCP阿部)このような事業に対して、なぜ我々が投資をしたのかという観点についてお話しいただきたいと思います。湯浅さん、この辺りについてお話しいただけますでしょうか。
GCP湯浅)投資を決断した背景には、いくつかの理由があります。まず、巨大市場という点が挙げられます。我々の7号ファンド(727億円)の投資基準の一つに、将来的に1000億円を超える企業価値を生み出せるポテンシャルがあるかどうかがあります。その点で、物流、特に陸運配送の分野には非常に大きな機会があると考えていました。日下さんがこの分野に着目されているのは流石だと思います。
次に、市場にフィットするプロダクトを作り出せているという点です。この分野は皆が機会を認識していますが、実際にそこにフィットするプロダクトを作るのは非常に難しいです。業務要件が複雑で、テクノロジーと物流業界の両方に精通している必要があります。その中で、日下さんたちの「ロジックス」が市場に刺さり始めているタイミングでした。2023年春頃から話を始め、その間も導入が次々と決まっていきました。顧客へのヒアリングでも、「ロジックスなしには業務が回らない」というほど深く浸透していることがわかりました。
最後に、優れたチームという点が挙げられます。日下さんを始めとするチームの質の高さも魅力でした。日下さんの真摯で誠実な姿勢、業界への熱い思い、そして人を巻き込む力は印象的です。オフィスを訪問した際も、メンバー一人一人が優秀で、かつ人柄も良いと感じました。このような環境には今後もいい人材が集まり、組織としても成長していくだろうと確信しています。
つまり、市場、プロダクト、そして経営陣を含むチーム。この三つの観点から投資を決断しました。付け加えると、優れたスタートアップの場合、投資家側が選ぶだけでなく、逆に会社側が投資家を選ぶという面もあります。途中からは、我々が日下さんたちに選んでもらうための逆ピッチのような形になっていったように記憶しています。
GCP阿部)市場、プロダクト、チームという三つの観点が挙げられましたが、特に気になった点が二つあります。まず、物流業界特有の難しさについて、プロダクト開発やお客様対応の面でどのように対処されているのでしょう?
日下氏)ありがとうございます。まず、我が社の経営体制の特徴として、CEO、COO、CTOの3名体制で運営している点が挙げられます。これは、当社がものづくりを重視する会社であることを明確にするための意思決定でした。CTOには最初から取締役として参画してもらい、株式も保有してもらっています。これは若干冒険的な決断でしたが、結果的には正解だったと考えています。
技術を理解している人間が経営陣にいることで、ビジネスサイドと技術サイドの対立を避け、複雑な運送業界の要件を適切に汎用化し、優先順位をつけて製品開発のロードマップに乗せることができています。これが、我々が業界でプロダクトを成功させている要因の一つだと考えています。
市場の見方についても重要な点があります。私は市場規模よりも、社会課題の多さや解決の必要性を重視してマーケットを選んでいます。当初は医療、物流、介護の三つの選択肢を考えていましたが、物流なら自分の身近なところでも取り組めると考え、この分野を選びました。
このような大きな基準を持つことで、小さな個人的な基準ではなく、業界全体にとって何が良いのかという視点で議論ができます。そのため、協調的にプロダクト開発を進められる側面もあるのではないかと考えています。
物流業界で注目される2024年問題、根本的な課題
GCP湯浅)物流業界が直面している巨大な課題と、ロジックスがそれをどう解決しているかについてご紹介頂けますか。
日下氏)直近では2024年問題が注目されています。これは働き方改革関連法の適用により、運転手1人当たりの労働時間に上限規制がかかり、結果として運べる距離が短くなり、荷物が運べなくなる状況が生じる可能性があるというものです。
しかし、私はこれが2024年だから突然起きた問題ではないと考えています。トラック運送業は元々、全産業平均と比べて労働時間が2割長く、賃金が2割低い業界です。つまり、人より長く働いて賃金が低い状況が続いていたのです。2024年の法改正はこの状況に拍車をかけるだけです。
本質的に変えなければならないのは業界構造そのものです。具体的には、1人当たりの労働時間を短縮するための生産性向上への投資、賃金の原資となる運賃の適正化など、運送業の経営全体を高度化する必要があります。
このような課題認識のもと、ロジックスは単に配車や請求といった個別の業務効率化だけでなく、それらを繋ぎ合わせて業務コストを下げ、生産性を向上させると同時に、そのデータを基にトップラインの改善にも取り組むという、包括的なソリューションを目指しています。
これは創業当初からの構想でしたが、それだけ大きな目標を持って開発に取り組んだため、かなりの時間がかかりました。しかし、現在では一部のセグメントにおいて、しっかりとプロダクト・マーケット・フィット(PMF)を達成できる状態まで来たのではないかと感じています。
日下氏のチーム作りへの思い
GCP阿部)今のお話は、冒頭の方で触れられた組織の話にも関連していると思います。また、先ほど湯浅さんからもチームメンバーの熱意について言及がありました。
そこで、組織の特徴やチームについて、日下さんが意識して取り組んでいることや、メンバーに関する話などをもう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか。特に、組織づくりにおいて重視されている点や、チームの特徴などについてお話しいただければと思います。
日下氏)私は本当に仕事が好きなんです。趣味というものもあまりなく、仕事そのものが楽しいと感じています。そのため、好きになれる仕事をしようと常に意識しています。
この考え方は、二つの重要な点に繋がります。一つは、取り組むべき課題が本当に重要な問題なのかということです。30代という貴重な時間を費やすに値する課題なのか、その選定を間違えないことが大切だと考えています。
もう一つは、誰と仕事をするかということです。自分のためではなく、本当に課題解決のために向き合える人、そういったマインドセットで仕事ができる人かどうかを重視しています。その意味で、「いい人かどうか」をとても大切に見ています。
私は、男性でも女性でも、「この人と結婚できるかな」というぐらいの気持ちで人を見ているんです。実際、そのような姿勢で人材を見ていた結果、当社の10番目くらいの社員と12番目くらいの社員が結婚するという出来事も起きました。これは、良い人同士が集まってくれている証だと思っています。
GCP湯浅)なるほど、その採用基準はかなり斬新ですね。
GCP阿部)御社の特徴的な取り組みとして、社員食堂の話を聞いたことがあります。確か、毎日19時から皆さんで一緒に食事をする機会を設けているとか。この辺りについて、もう少し詳しくお話しいただけますか。
アセンド社の組織文化を表す、「アセンド食堂」とは
日下氏)食堂の話も含めて、組織への投資についてお話しさせていただきますね。
まず、SaaSビジネスは人が中心のビジネスモデルです。開発、営業、カスタマーサクセス、そしてそれらを支えるコーポレート部門まで、基本的に少数精鋭では運営できません。さらに、バーティカルSaaSとなると、複数の事業を組み合わせる「コンパウンドスタートアップ」の形態が求められ、組織的な運営がより重要になります。つまり、強い組織作りは経営戦略そのものだと考えています。
そのため、創業時から等級制度、評価制度、報酬制度などを外部アドバイザーの助言を得ながら構築し、毎年更新しています。
その一環として、福利厚生の意味合いも込めて「アセンド食堂」を運営しています。毎日19時から、社員が持ち回りで調理します。調理する人の時間は業務時間、食事をする人の時間は休憩時間としています。
この取り組みの狙いは主に二つあります。一つ目は心理的安全性の向上です。同じ食事を共にすることで、お互いをより深く知ることができます。これは、フィードバックの受け取り方にも影響し、組織の風通しを良くします。二つ目は健康管理と生産性の維持です。ハードワークする時期もありますが、規則正しい食事は重要です。空腹は機嫌や体調に影響するので、美味しい食事をしっかり取ることで、長期的なハードワークを支える基盤になります。
このように、食堂は単なる福利厚生ではなく、組織の強化と個人の健康維持を両立させる重要な取り組みとなっています。
GCP湯浅)本当に、私もいろんなスタートアップとお話する機会をいただきますが、アセンドは初期からの組織文化への投資が半端ないと感じています。抜きん出ているという印象です。
先ほどおっしゃっていたような評価制度や昇格の要件、フィードバックの仕組みなども、とてもよく作り込まれています。しかも、単に制度を作るだけでなく、それが形骸化しないように真剣に運用されているのが印象的です。
先ほどの食堂の話に加えて、定期的に合宿のようなものも実施されていると聞きました。たしか四半期に1回、全社員で行っているとか。そういった取り組みも、組織文化の醸成に大きく貢献しているのではないでしょうか。
そうですね。長期的に事業を継続していくためには、組織内の関係性をしっかりと強化していく必要があるという考えが背景にあるのだと思います。
アセンドの場合、それが単なる言葉だけではなく、実際の仕組みや日常の文化として組み込まれていることが非常に印象的です。
特に、物流業界の課題解決に取り組むということを考えると、3年程度の短期間で成し遂げられるものではありません。長期的な視点と持続可能な組織づくりが不可欠だと感じます。
おっしゃる通りですね多分桁違うぐらいの年数かかると思うから、多分そこに向けた今は核となるすごいチームであり、あの文化ができてるのかなっていうふうに思いました。
日下氏)ありがとうございます。おっしゃる通りで、事業の性格から文化が定義されるべきだと思っています。新しい人が入ってくると文化も柔軟に変化し、それを制度に落とし込んで定着を図る。この組織的な新陳代謝を促す組織であり続けたいと思います。これは自分の得意分野でもあると感じています。
GCP阿部)フェーズによって文化や仕組みも適切に変えていく必要がありますね。それに対する強い意識があることは素晴らしいと思います。
お話を伺っていて、私もその食堂に行ってみたいと思いました。
日下氏)ふらっと来ていただければ大丈夫です。1時間いるだけでアセンドという会社の文化が理解できると思います。みんな食事しながら仕事の話をしています。
GCP阿部)外部の人も参加できるんですか?
日下氏)もちろんです。お客様や採用候補者の方にも来ていただいています。オフィスの奥に食堂があり、キッチンも付いています。「アセンド食堂」の、のれんがあって、ゲストの方に持っていただいて写真撮影をするというコンテンツパッケージになっています。
GCP阿部)面白いですね。ぜひ機会があれば伺わせてください。
今後の事業展望と期待
GCP阿部)さて、これまで事業のご紹介や投資の背景についてお話しいただきましたが、最後に今後の方向性についてお聞きしたいと思います。日下さんから事業をどのように伸ばしていきたいか、そして湯浅さんからは期待していることや一緒に目指したい方向性についてお話しいただけますでしょうか。
日下氏)ありがとうございます。当社は今回シリーズAを迎えたところです。一般的に、シリーズAではPMF(Product Market Fit)の達成とスケール可能な営業体制の構築が求められます。さらに、バーティカルSaaSの場合は、SaaSの掛け算(複数の事業展開)があるかも重要になります。また、新規事業を生み出す仕組みも必要です。
我々としては、しっかりとPMFを達成する製品を作れたと考えています。また、一定の営業チャネルも構築できています。今後は二つの方向性に注力していきます。
まず一つ目は、既存事業の成長です。運送管理SaaS領域において圧倒的なシェアを獲得することを目指します。我々以外の参入を許さないくらいの勢いでシェア拡大を進めていきたいと考えています。
二つ目は、新規事業の展開です。創業当初から物流業界を対象にすることを決めていました。運送業のデータをさらに価値あるものにできるという仮説のもと、事業を運営してきました。現在、いくつかの可能性が見えてきており、2〜3の新規事業を私自身が責任を持って立ち上げていく段階に入っています。
つまり、既存事業の成長と並行して、2〜3の新しい事業の柱を確立することが今後の方向性です。
GCP阿部)ありがとうございます。この辺り、湯浅さんの方からはどうですか。今後の方向性で期待してるところがあればコメントを頂きたいです。
GCP湯浅)そうですね、二つ申し上げたいことがあります。
一つ目は、我々はただのSaaS企業に投資したわけではないということです。我々の期待はそれを超えて、いかにこの業界のプラットフォーマーになっていくかというところにあります。物流業界のDXを考えたとき、SaaSから入り、そこで蓄積されていくデータをもとに次の展開を図るという、日下さんがおっしゃったような戦略にとても期待しています。
二つ目は時間軸の話です。我々は短期的な上場を求めているわけではありません。むしろ、しっかりと腰を据えて時間をかけ、世の中や業界に大きなインパクトを残してほしいと思っています。その過程で追加のファイナンスも必要になるでしょう。我々はそのために大きなファンドを用意しています。
今回のシリーズAはあくまでエントリーポイントです。今後もご縁があれば、追加で投資させていただきたいと考えています。既にアセンドに投資したいという企業も多くありますので、必要な資金を必要なタイミングで調達し、大きな目標に向かって進んでいただければと思います。
日下氏)私たちも様々な投資家の方とお会いしましたが、グロービスキャピタルパートナーズ(GCP)を選んだ理由は明確です。単にSaaSとして成長するだけでなく、より大きな目標を目指すという私たちのビジョンを共有していただけたからです。
この決断は、私たちの側でも慎重に検討し、最終的な意思決定をしたものです。GCPと共に、この大きな山を登っていきたいと考えています。今後も様々な場面で力を貸していただきたいと、私としても改めて思っています。
GCP湯浅)お聞きしたいのですが、アセンドのロゴは山をモチーフにしているのでしょうか。
日下氏)そうですね。ロゴは山をイメージしています。これは「アセンド(上昇する)」という社名の通り、高く登っていこうという意味を込めて作りました。
GCP阿部)素晴らしいですね。まさにその会社のビジョンを表すロゴの山を登っていくような感じですね。ちなみにこのロゴの山だとどの辺りにいるイメージですか。
日下氏)そうですね。多くの人が言うことかもしれませんが、実際のところ、まだ1号目の目標さえ達成できていない状況です。
まず、運送管理SaaSの市場自体がまだまだ大きいので、そこでしっかりとシェアを獲得していくことが重要です。その市場だけでも十分に大きな可能性がありますから。我々は今、まさにその市場に参入したばかりという段階です。
そして、その先にはさらに大きな目標が控えている。本当に起業家の方々は大変だなと思います。常に次のステップ、さらに大きな挑戦を見据えていかなければならないわけですから。
GCP阿部)逆に言えば、我々も日下さんたちがその大きな山を登っていく過程をしっかりと支援できるようにしなければいけないと、私個人としても強く感じています。
今日は、アセンドの代表である日下さんにご登場いただき、アセンドの事業についてのお話と、今後の展望についてお伺いしました。ありがとうございました。
日下氏、GCP湯浅氏)ありがとうございました。
以上