
2017.10.10
投資先の成長を支えるための「4R」。GCPが考える“ハンズオンの本質”とは?
グロービス・キャピタル・パートナーズでは投資先企業の成長をより加速させるため、各投資先担当キャピタリストによる経営支援に加え、組織横断的な支援も行っています。
今回は後者の具体的なアプローチである「4R」(HR、PR、IR、EngineeR)について、キャピタリストの今野穣、東明宏、羽鳥裕美子が解説。「4R」の基礎となる採用・組織開発を支援する「HR」、投資家や潜在顧客に対し企業/事業の本質的な価値のコミュニケーションを支援する「IR」と「PR」、エンジニアの採用から組織の編成までを支援する「EngineeR」、グロービスが考える“ハンズオンの本質”など、ファームに根付くノウハウ・哲学を語っていただきました。
(インタビュー:長谷川リョー)
今野穣(以下、今野):グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)では、投資先の企業を資金提供以外の側面からもバックアップするため、組織内に蓄積したノウハウを惜しみなく提供しています。なかでも、スタートアップが成長する上で必須になる「4R」を重点的に強化、組織的な仕組みに落とし込んで提供しています。「4R」とは具体的に、HR(Human Resources)、PR(Public Relations)、IR(Investor Relations)、そしてエンジニア(EngineeR)を指します。まずは、それぞれの概念について簡単に説明させてください。
最初に「HR」ですが、昨今のベンチャービジネスは、ビジネスアイデアそのものに参入障壁がある訳ではなく、スピードが最大の成功要因だったりしますので、企業が拡大していくために、適切な人材を適切なタイミングに採用することが必須となります。逆に採用が弱い企業は成長が遅く、一向にビジネスがドライブしません。また、ステージが浅く、売上もブランドも資金も十分でないベンチャー企業にとっては、幹部候補の人材を投資先企業自身が単独で採用するのはとてもハードルが高い。
そして、「PR」は企業の認知度の向上や取引先や提携先の増加、採用の強化にもつながる欠かせない要素です。メディアへの露出などは継続性があって初めて成長を加速する要素になるため、中長期的な視点で取り組む必要があります。
「IR」は、やがて当該企業が上場し、資本市場との対話をすることが求められる時が来る前に、経営層と株主の間に発生する情報の非対称性を防ぐためにも、しっかりと理解を促していかなければない部分です。プロダクトやサービスを創ったり、事業ドメインとなる業種・業界に詳しくても、投資家と対話ができなければ資本市場から評価されません。
最後の「EngineeR」は、エンジニア独特の文化を理解するためのメンタリング。エンジニア採用は企業の規模に限らず喫緊の課題です。加えて、エンジニアの方々はある意味において芸術家であったり、緻密なメカニシャンだったり、他方ではマネジメントとスペシャリストとの融合が必要だったりと、それ以外の職種よりも個別性が高いので、最近敢えて切り出して支援をすることにしました。
ーーHRから順番に「4R」が企業の成長に不可欠な理由と支援内容について、具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか?
東明宏(以下、東):HRは大きく分けて「採用」と「組織開発」の2つの要素から構成されます。採用支援については、我々のネットワークを駆使してダイレクトに人材を紹介するパターンと、外部のエージェントの皆さんと連携して最適な人材を提供するパターンがあります。前者については、事業展開を加速するために幹部候補を積極的に紹介しています。COO、CFOなど数多くのCXO人材を投資先にご紹介してきましたが、これは投資先の皆さんに最も喜ばれる支援の一つで、我々としても投資先の価値を向上させる活動として今後も力を入れて行きたいと考えています。後者については懇意にさせて頂いているエージェントの皆様を通して企業価値向上につながる人材をご紹介しています。その1社であるネットジンザイバンクさんを通じては、昨年約30名の幹部候補となる人材を投資先に紹介、転職頂きました。ベンチャーにとって最も重要な課題の一つが優秀な人材の確保です。一緒にこの課題に向き合ってくださる、熱意あるプレイヤーの皆さんとはどんどん提携していきたいと考えています。
組織開発支援は定期的に少人数制の勉強会を開催するなどし、組織開発知見の共有を進めています。我々には20年ベンチャーキャピタルをやってきたことによる組織開発知見、先輩ベンチャー企業の経験の蓄積があります。そこから有意なものを現在の投資先にシェアしていきたいと考えています。また、昨今はHRテック全盛で、データを活用した組織課題の解決手法も出てきていると認識しています。「人材の組み合わせロジック」を持つヒューマンロジック研究所さんとは、「どういう人材が入ると経営チームが強化されるか」という経営チームの強化についてディスカッションをさせて頂いたりして、組織開発の科学も進めていっています。
今野:私たちが採用を支援する理由は二つ。一つは投資家が採用に入ることで、信用を担保できるからです。規模の小さい企業は、経営陣がビジョンを語ることで人材を獲得するのが一般的ですが、それだけで優秀な人材を口説くのは難しい。そこに投資家が責任を持ってデューデリジェンスして投資実行したり、より客観的に当該ビジネスの将来性をどう認識しているのかなどの点でエビデンスを添えてあげることで、採用しやすくなります。
二つ目は、起業家自身が気づいてない人材のニーズを満たすこと。今は人材が充実しているように見えても、例えば数年後に売上100億円を目指すなら早めに手を打つ必要があります。特に幹部候補となる人材は時間をかけて説得する必要があるため、面会の機会を設けてあげることで、先々の展開を見据える重要性を喚起しています。
(写真、左から)羽鳥裕美子、東明宏、今野穣
今野穣(以下、今野):グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)では、投資先の企業を資金提供以外の側面からもバックアップするため、組織内に蓄積したノウハウを惜しみなく提供しています。なかでも、スタートアップが成長する上で必須になる「4R」を重点的に強化、組織的な仕組みに落とし込んで提供しています。「4R」とは具体的に、HR(Human Resources)、PR(Public Relations)、IR(Investor Relations)、そしてエンジニア(EngineeR)を指します。まずは、それぞれの概念について簡単に説明させてください。
最初に「HR」ですが、昨今のベンチャービジネスは、ビジネスアイデアそのものに参入障壁がある訳ではなく、スピードが最大の成功要因だったりしますので、企業が拡大していくために、適切な人材を適切なタイミングに採用することが必須となります。逆に採用が弱い企業は成長が遅く、一向にビジネスがドライブしません。また、ステージが浅く、売上もブランドも資金も十分でないベンチャー企業にとっては、幹部候補の人材を投資先企業自身が単独で採用するのはとてもハードルが高い。
そして、「PR」は企業の認知度の向上や取引先や提携先の増加、採用の強化にもつながる欠かせない要素です。メディアへの露出などは継続性があって初めて成長を加速する要素になるため、中長期的な視点で取り組む必要があります。
「IR」は、やがて当該企業が上場し、資本市場との対話をすることが求められる時が来る前に、経営層と株主の間に発生する情報の非対称性を防ぐためにも、しっかりと理解を促していかなければない部分です。プロダクトやサービスを創ったり、事業ドメインとなる業種・業界に詳しくても、投資家と対話ができなければ資本市場から評価されません。
最後の「EngineeR」は、エンジニア独特の文化を理解するためのメンタリング。エンジニア採用は企業の規模に限らず喫緊の課題です。加えて、エンジニアの方々はある意味において芸術家であったり、緻密なメカニシャンだったり、他方ではマネジメントとスペシャリストとの融合が必要だったりと、それ以外の職種よりも個別性が高いので、最近敢えて切り出して支援をすることにしました。
4Rの礎となる「HR」は、「採用」と「組織開発」を支援。起業家さえ気づいていない人材ニーズを指摘することも
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