Day1からグローバル組織を目指す、ジョーシスの魅力 ~ジョーシスCEO(ラクスル創業者)松本氏 × GCP代表パートナー 高宮~
本記事は、2024年1月に収録されたGCP Houseの書き起こし記事となります。
ジョーシス創業の理由とグローバル展開への思い
GCP阿部)始まりましたGCP House!今日は、ジョーシスの松本恭攝(やすかね)さんをお迎えしましてジョーシス社の魅力と、それからジョーシスさんに投資をした背景をグロービス・キャピタル・パートナーズの高宮よりお話させて頂きたいと思っております。まず松本さんから自己紹介をお願いしてもよろしいですか。
松本氏)はい、ジョーシス株式会社代表取締役CEOの松本恭攝です。私は、ラクスルという会社を2009年に創業して2018年に上場し、19年に今のPrime市場に行き、そして上場企業のCEOとして5年間経営をした後に、2023年CEOをステップダウンして今2020年に立ち上げたジョーシスという会社のCEOで時間でいうとほぼ99%の時間をジョーシスに今フルコミットしているというシリアルアントレプレナーになります。
GCP阿部)続いて高宮さんからも簡単に自己紹介お願いします。
GCP高宮)はい、グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮です。いわゆるベンチャーキャピタルスタートアップに投資をして、本当にスタートアップが世の中を変えるとか、ユニコーン、デカコーンとして過去1兆円になるようなところを応援していくような仕事をしています。今回は本当に大きなチャンスということでご一緒させていただいています。よろしくお願いします。
GCP阿部)松本さんから、なぜこのジョーシスを創業するに至ったのかというところを簡単にお話いただいてもいいですか。
松本氏)ラクスルからスタートして、ハコベルという物流事業、ノバセルというテレビCMの事業を立ち上げ、そして四つ目の事業としてジョーシスを私自身で立ち上げたのが、最初のスタートでした。ジョーシスを始めた理由は、2020年4月のコロナ禍での大きなストレスがきっかけです。3月までは対面で仕事をしていましたが、3月末に東京都の緊急事態宣言が出て、翌週からほとんどの人がリモートワークに切り替えました。人々がこれほど早くデジタルに対応できたことに大きな感動を覚えました。
コロナ禍で、Slack、Zoom、miroなどのクラウドアプリを使うようになり、ITがリモートワークを支えている状況が生まれました。多くの企業家と同じように、ポストコロナの世界でどのような新しい事業が生まれるのか、チャンスはないかと考えていました。
当時、世界中で同時に起きたリモートワークへの移行は、世界的な問題でした。世界中の人が同じパソコンとクラウドアプリを使って働いているという状況で、この問題を解決するリモートワークのインフラを作ることができれば、世界の課題を解決できるのではないかと考え、ジョーシスを立ち上げました。
ラクスル、ハコベル、ノバセルは日本国内の顧客向けの事業でしたが、ジョーシスはDay1から世界中の企業の課題解決を目指しました。私のCo-Founderはインド人で、テクノロジーの開発はすべてインドで行い、日本の顧客に提供しています。
最初の1年で20~30人の組織に成長し、そのうち日本人は1~2割で、残りはインド人です。完全にリモートワークで、日本人同士もインド人同士も会わずに、ワンチームでプロダクトを開発し、PMFまで様々な検証を行いました。
世界の顧客に向けてサービスを提供する基盤をDay1から作り、そのような組織を1から作っていくことに、私は強い思いを込めています。コロナ禍によって、世界が小さくなり、インドと日本が毎日ミーティングできるようになりました。以前は3ヶ月に1回しか会えませんでしたが、今では毎日ミーティングができます。こうして生まれた組織で、世界の問題を解決していきたいという思いでジョーシスを始めました。
リモートワーク時代のITオペレーション課題を解決するプラットフォーム提供へ
GCP阿部)改めてこのプロダクトの内容と、どんな事業をしているのかということもお話いただいてもよろしいですか。
松本氏)ジョーシスの事業は、クラウドのハイブリッドワークを支えるITの管理と運用のためのプラットフォームです。自宅でパソコンを使い、Slack、Zoom、その他様々なアプリケーションを利用することがあると思います。これらのアプリケーションは、情報システム部やITオペレーションのチームが管理しています。
以前は、オフィスにパソコンを取りに来てもらい、セットアップして配送する必要がありました。クラウドアプリも、マイクロソフトやGoogleなど限られたものでした。しかし今は、多数のアプリケーションを使うようになり、新入社員のセットアップには、50個もの別々のダッシュボードでアクセス権限を設定する必要があります。また、社員が別の部署に異動する際には、全ての権限を付け替えなければなりません。
クラウドの急増とリモートワークの普及により、ITオペレーションは非常に複雑になり、企業はITの管理が実質的にできなくなっています。これは、中小企業から日本を代表するグローバル企業まで、全ての会社で起きている問題です。日本だけでなく、アメリカやシンガポールでも、ジョーシスの顧客はみな同じ課題を抱えています。
ジョーシスを導入すると、全てのITシステムがジョーシスと連携し、情報システム部門が全体を把握できるようになります。ワンクリックで全てのアプリケーションのアクセス権限を発行・削除したり、部署異動時に権限を付け替えたり、新しいアプリケーションを追加したりできます。ジョーシスは、ハードウェアとソフトウェアの管理を一元化するシステムです。
グローバル市場に挑むジョーシス、GCPが投資の理由を明かす - 松本氏との運命的な出会い
GCP阿部)松本さんには、ジョーシスというプロダクトの内容や、それがどのような課題を解決するのかについてお話しいただきました。次は、高宮さんにお聞きしたいと思います。高宮さんが、なぜジョーシスに投資をされたのか、そしてジョーシスの魅力について、ぜひお話しいただけますか。
GCP高宮)松本さんは、グローバルに挑戦し、グローバルで勝つことにコミットしています。これは、チャレンジの大きさと面白さに尽きると思います。純粋にベンチャーキャピタルという投資家目線で見ると、クラウドの普及とリモートワークの定着により、働き方が変わり、新しいオポチュニティが出てきています。しかも、それが大企業からSMBまで、日本から世界まで、世の中全体の共通のニーズであり、ワンプロダクトで世界を攻められるというオポチュニティの大きさは非常に魅力的です。
日本を代表するシリアルアントレプレナーの松本さんがジョーシスにコミットし、そこを狙うことは、ユニコーンどころではなく、本当に1兆円、10兆円を狙える世界観へのチャレンジであり、大きなチャンスであると同時に、大きなチャレンジとしての楽しさがあると思います。
投資家目線だけでなく、Day1からグローバルで世界中のマーケットをどう攻略するかを考えるチャレンジや、Day1からグローバルに対応した組織作りにより、Co-Founderを始めとして組織体制がグローバルスタンダードになっています。日本国内の企業では体験できないグローバルな組織で自分もその中に入るというチャレンジがあります。
また、SMBから大企業まで様々な顧客のニーズを考えていくチャレンジもあります。このスタートアップならではの、自分で価値を提示し、やり方も考えながら、裁量の幅が大きくなって結果を出していくことができます。さらに言うと、松本さんやCo-Founderなど、グローバルレベルで活躍する起業家と共にチャレンジできる自分の成長機会があるということは、非常にエキサイティングな会社だと思います。
投資だけでなく、自分も同じ船に乗せてもらうことが、自分にとってもめちゃくちゃ楽しいと思い、投資させていただいたという感じですね。
GCP阿部)その観点で言うと、松本さん側から高宮さんにピッチをしたときの印象はどうでしたか。
松本氏)高宮さんには、以前の2012年と2014年にラクスルへの投資を検討していただいたことがありましたが、当時はうまくいきませんでした。今回、2023年4月にシリコンバレーでイベントがあった際、9月にシリーズA、Bを行い、数字が非常に良かったので、もう一度ファイナンスを行い、世界で戦う体制を整えようと考えていました。その日、高宮さんとホテルの外で寒い中立ち話をしました。
その際、高宮さんがグローバルへのチャレンジを想像以上に応援してくださったことが、とても嬉しかったです。多くの投資家は、グローバルへのチャレンジは良いと言いつつも、成功確率が低いからあまりやらないでほしいと言います。また、上場企業として経営していると、海外進出を行うと株が売られてしまうこともあります。
そのような状況の中で、高宮さんが応援してくださり、その後すぐに投資を決めていただいたことは本当に嬉しかったです。高宮さんがおっしゃったように、チャレンジを応援してくださり、私たちもユニコーンを作ろうという気持ちはなく、最低でもデカコーン、できれば10倍以上の規模でグローバルに展開できる会社を作ろうという目線でやっています。この目線を尊重していただけたことは、最初の5分ほどの話でしっかりと噛み合ったと感じ、とても嬉しかったです。
GCP高宮)ジョーシスは、もちろん松本さん個人が中心となっていますが、社長創業者を終えて、様々な人がグローバルにチャレンジするためのプラットフォームになれると思います。投資家としても、日本からグローバルで勝つスタートアップを輩出したいというチャレンジをする際の受け皿となり、同じ船に乗せてくれます。また、プロフェッショナルがグローバルで活躍したい、グローバル企業を体験したい、日本人でも世界で活躍する人材になりたいという思いを実現できるプラットフォームでもあります。
ジョーシスは、多くの人のチャレンジの背中を押してくれるプラットフォームの仕組みやカルチャーを作っています。投資家としても、そこに巻き込まれてしまいました。裏話として、ホテルの外の寒い中で松本さんの話を聞いた瞬間に、たまたまその日にパートナー全員がいたので、翌日の早朝7時に松本さんに来てもらってピッチしてもらいました。そこでほぼ方向性として合致したので、投資をお願いしたいと伝えました。
その後、しっかりとチェックすべき点は確認しましたが、大きな方向性としてはそこで握れました。これは、私たちの会社も、私個人も、他のパートナーもグローバルでチャレンジしたいという思いがあり、ジョーシスという大きな器がそれを受け止められるだけの大きなビジョンを描いていたからだと思います。
GCP高宮)ベンチャーキャピタルとしては本当に日本を代表する起業家の松本さんが世界にチャレンジするなら、それは応援しないわけにはいかないでしょうっていう。松本さんを応援しないで誰を応援するのっていう。もうそれぐらいの何か、日本初という意味ではチャンスなんで、ぜひ松本さんには日本を背負って何か頑張ってほしいみたいなのがあるんで、本当に日本人として、ジョインして、日本から世界に出るパスとして、ジョーシスを見ないでどうするのぐらいの話だと思うんですよね。
国境を越えたフラットな組織で世界に挑むジョーシス - 日本発グローバル企業の新たなカタチ
GCP阿部)これからジョーシスがさらなる成長を目指す中で、ジョーシスの魅力と、今後目指す方向性について、ぜひ松本さんからお話しいただきたいと思います。また、高宮さんからも、この点についてコメントがあれば、ぜひお聞かせください。
松本氏)ジョーシスの独自性は、グローバルな観点にあります。例えば、Co-founderであるNo.2は日本人ではなく、ジョーシスに入社後、初めて日本に来ました。彼は元々インド工科大学出身で、DellEMCやハニウェルなどのアメリカのIT企業で長年働き、マネジメントやエグゼクティブの経験が豊富です。日本とは全く関係のない人とスタートする会社は多くありません。
チームは多国籍で、インド系、アジア系、東南アジア系、北米のメンバーがおり、人種も性別も様々です。現在約170名のうち、100名がインド、10名がベトナムのホーチミン、40~50名が日本、アメリカ、シンガポールに在籍しています。(※podcast収録時点での人数)日本人が世界で戦うのではなく、グローバルなベストチームを作り、ワンチームで世界にサービスを提供することを強く意識しています。
組織構造は、テクノロジーをインドとベトナムで開発し、プロダクトのヘッドはアメリカのシリコンバレーにいます。コーポレートは日本に置き、グローバル全体を見ています。セールスマーケティングは、最も重要な市場である日本で行い、シンガポールはAPAC全体をカバーしています。カスタマーサクセスは、日本は日本で、グローバル全体はインドのチェンナイから担当しています。
つまり、多国籍に拠点を作るのではなく、センターとなる拠点を作り、グローバルワンチームとしてセールス契約後のオンボーディングを日本とインドからサポートするというクロスオーバーな事業展開をしています。本国という考え方はなく、全員がフラットで、日本は世界に情報を提供する役割を担っています。
日本発グローバルとは異なり、日本Wayを世界に広めるのではなく、マルチナショナルなチームを作り、国を越えたフラットな組織を目指しています。これは日本の会社では珍しい運営方法です。
日本でのセールスやマーケティングは主に日本ですが、韓国の立ち上げを日本のチームが担当したり、プロダクトマネージャーがシリコンバレーやシンガポールに行ってオンボーディングを行うなど、クロスオーバーで動きやすい会社運営が特徴です。
ジョーシスが目指す"フェアでダイバーシティあふれる組織" - 松本氏が語るカルチャー作りの極意
GCP阿部)ジョーシスの魅力としては、Day1からグローバルを目指しているところが大きいと思います。高宮さん、もし他にも補足やこんな魅力があるよという点があれば、ぜひお聞かせください。
GCP高宮)外資系企業の日本採用では、どうしても日本支社の現場メンバーとしての採用になりがちですが、ジョーシスの場合は真にグローバルでフラットな組織であり、日本という入り口がグローバル組織の中心に直接つながっているため、グローバル組織に入りやすいという魅力があります。
さらに、松本さんに深掘りしていただきたいのは、こうした組織におけるフィロソフィーやカルチャーについてです。ジョーシスでは、プロフェッショナリズムを重視し、年齢や役職に関係なく、結果を出せば管掌範囲が広がり、成長の機会が与えられるといった組織運営上のフィロソフィーやカルチャーがあります。このような点も、ジョーシスの大きな魅力だと思いますので、ぜひ触れていただけたらと思います。
松本氏 )年齢については、若い方が良いわけではなく、50代、60代の方でも一切関係ありません。実際に海外のメンバーにはシニオリティの高い人もたくさんおり、みんなが20代、30代でやっているわけではありません。年齢を聞くことはハラスメントにあたるため避けていますが、見た目からして20代ではないメンバーが多いです。一方で、20代のメンバーでも役員になることはパフォーマンス次第で可能であり、かなりフェアな評価が行われています。
私が事業と組織を作る上で最も大切にしているキーワードは「トラストファースト」です。プロフェッショナルな組織では、入社時に自分の力を証明しなければ仲間から認められないことがありますが、これは非効率でオンボーディングしづらい状況だと考えています。むしろ、最初から信頼されている心理的安全性があれば、思い切って意見を言い合うことができ、信頼を築き上げることでパフォーマンスを最大化できます。能力の高い人でも、信頼のない環境では力を発揮できません。
信頼は態度や考え方によって作れるものだと思っています。採用プロセスで能力と経験値を確認し、信じて活躍できる環境をDay1から提供できる会社を目指しています。ただし、パフォーマンスに対してはフェアであり、高い目標を設定して卓越性を追求する努力を求めています。世界を変えるような事業やソフトウェアを作るには、高い目標が必要です。
同時に、チームで勝つことを重視し、「Win as a Team」をバリューの一つとしています。トラストファーストの組織を作り、ダイバーシティとグローバル性を持ち、全員が「Ownership & Accountability」「Trust & Transparency」「Aim High & Strive for Excellence」「Win as a Team」の4つのバリューを共有して、高い目標に向かってチームで成果を上げ、信頼し合い、オーナーシップと説明責任を果たしていく会社作りを進めています。これが私たちのカルチャーです。
GCP高宮)いや本当、ジョーシスという会社そのものが、松本さんが大振りして大きなチャレンジをしているからこそ、組織としても大振りしてチャレンジをする人、何か後押しするし、支えるしみたいな感じがすごいあって、大きなチャレンジしたい、大きな成長したいみたいな人にとっては天国なんじゃないかなって投資家として思いますね。
ジョーシスが目指す未来 - 高い目標とグローバルなカルチャーで世界を変える
GCP阿部)そうですよね。本当に今まさにお話いただいた組織の構成というところもそうですし、カルチャーというところも他のスタートアップでなかなかない独自性をすごく感じています。それでは、最後にぜひお2人からそれぞれ一言ずつ今後目指していく方向性と、あと高宮さんから期待していることというところもコメントいただけたらなというふうに思っているので、まずは高宮さんから一言いただいてもいいですか。
GCP高宮)ジョーシスは、1兆円どころか10兆円にもチャレンジできる、世界で勝つことに挑戦できる資格を持った素晴らしい会社だと思います。ジョーシスという会社は、単に会社自体のためだけでなく、そこで働く人々がエンパワーされ、自己実現と成長を遂げられる場になり得ると考えています。ジョーシス側には、今日松本さんがおっしゃったことを継続して維持・強化していっていただきたいと思います。また、ジョーシスに参加する皆さんも、お互いに刺激し合い、場の力をさらに強くしていくことができるでしょう。
大きな目標に向かって挑戦したい人、大きく成長したい人にとって、ジョーシスは本当に最適な場所だと思います。ジョーシスという場の力を活用し、さらにその場を強化することで、良い循環が生まれていくことを期待しています。
GCP阿部)ありがとうございます。最後に松本さんからも一言いいですか。
松本氏)ジョーシスは設立から2年目の、まだできたてホヤホヤの会社です。来年の2月で3年目を迎えます。10年、20年後に振り返ると、この2年目、3年目に入社した人は、創業期の創業メンバーに近い存在になっているでしょう。この創業期のメンバーとして、私が特に意識しているのは、どのようなカルチャーを作っていくかということです。カルチャーとは、どういう目線で、どのような目標を掲げていくかということです。
私は、とにかく高い目標と高いスタンダードを掲げたカルチャーを作りたいと考えています。これをグローバルで一律に適用し、全員が大きく振りかぶって、チームで挑戦していきます。もちろん、振りかぶると外すこともありますが、振らなければ前に進めません。
メルカリは2014年に高宮さんから投資を受け、大きく振りかぶって日本を変える会社になりました。それは、高い目標を掲げて大きくバットを振る会社のカルチャーがあったからこそです。
ジョーシスも、世界で大きくバットを振る会社を作りたいと思います。5年後、10年後、15年後に世界を変えていくサービスを作る仲間の基盤を、今一緒に作っていきたいと考えています。
ジョーシスに興味を持っていただいた方は、ぜひ応募していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
GCP阿部)はい、ありがとうございます。今日は、ジョーシスの松本さんとそれから担当キャピタリストの高宮よりジョーシスの魅力について、事業、組織、そして、これから目指していく姿を全てお話いただきました。お2人ありがとうございました。
GCP高宮、松本氏)ありがとうございました。
以上