メタップス佐藤航陽×BUZZCAST山田雄介が語る 新規事業で力を発揮する人材の気質とマインドセット ~メタップス入社からBUZZCAST立ち上げまで~
ゲーム実況動画を活用したマーケティング支援事業を展開するBUZZCAST。2016年10月に、未だ課題の多い動画領域で、介在価値のあるプロダクトを展開すべくメタップスからMBOを行い独立した。
BUZZCASTで代表を務める山田雄介氏はメタップスの元社員であり、BUZZCASTの前身となる動画事業の責任者を務めていた。メタップス代表の佐藤航陽氏は、入社当時業界未経験であった山田氏を事業責任者に抜擢。その後もゼロからイチを創るポジションに登用した。理由は「リスクテイカーだったから」と言う。
今回のインタビューでは、佐藤氏が考える新規事業で力を発揮する人材の気質とマインドセット、新規事業を成功させる仮説検証、山田氏が求めるBUZZCASTに求める人材、2018年に業界構造が一変するメディアの行く末について話を伺った。
(後編:「1年後、ソーシャルメディアはマスメディアを逆転する」 –メタップス佐藤航陽×BUZZCAST山田雄介 起業家体験談)
9割が失敗する新規事業のキーサクセスファクターは「リスクテイカー」の存在
ーー山田さんはもともとメタップスの社員だったとお伺いしております。入社までの経緯をお伺いできますでしょうか。
山田雄介(以下、山田):高校を1年で退学しアルバイト生活を数年続けていましたが、当たり前に進学する友達を見て危機感を持ち、ゲームの専門学校でゲーム作りを学びました。その後、ガラケーの月額サイトを運営する会社に就職。その後コナミデジタルエンタテインメントに入社し、メタップスが4社目です。
ーー佐藤さんが山田さんを採用した理由を教えていただけますか?
佐藤航陽(以下、佐藤):山田さんが入社した2012年は、メタップスはまだ社員20人程度の小さな会社でした。新規事業を立ち上げ、さらに売上を目指そうと考えており、そのためにはフットワークの軽い人材が必要だったんです。
新規事業はやってみないと結果が分からない。参入するマーケットのサイズよりも、楽しみながらスピード感を持って動けるメンバーが重要です。彼がリスクテイカーだったのは大きかったと思います。
ーー山田さんは新規事業に向いている人材だったわけですね。
佐藤:はい。新規事業は仮説検証がとても重要です。PDCAを回しながら事業を推進し、仮説が間違っていたらその都度対応する柔軟さが求められます。初期の仮説が当たる前提で動く人は上手くいかないんです。
新規事業の9割は失敗するので、最初に立てた仮説が外れてからが勝負だと理解できているかが大事。山田さんは、上手くいかなくなってから力を発揮する人物だと判断しました。
山田:ただ振り返ってみると、当時の自分にそうした能力はなかったと思うんです。メタップスに入社し、新規事業を任されたことによって都度柔軟に対応する力が身につきました。
今でも、仮説検証を繰り返す大切さは自分の根幹にあります。当時携わっていた新規事業は現在サービスを終了してしまいましたが、ゼロからイチを立ち上げる経験があったからこそ佐藤さんの考え方がより深く理解できるようになりました。
佐藤:会社の体力は、ゼロからイチを立ち上げる力を持っている人の数でおおよそ決まります。だからこそ、私と同じく事業立ち上げを経験した人材をより多く作りたかったんです。
山田さんが入社したとき、メタップスの月商は200万円程度。しかし、年末には1.5億円まで成長しています。事業にコミットすることで売上が何十倍にもなるということを経験できたことが、山田さんにとって大きかったのではないでしょうか。その経験がある人材は「もう一度同じことができる」と積極的な思考になりますが、経験がなければ「そんなことは起こりえない」と消極的になってしまうんです。
山田:入社して1年目は、今ほど事業に対して当事者意識を持つことができていなかったと思います。決められた枠組みのなかで精一杯やるに止まっていました。しかし、会社の急成長を間近で体感し、意識が変わりました。
あの経験をしたからこそ、当事者意識を持つことの意義が理解できるようになったんです。チャンスがあればリソースをすべて投下し、リソースを投下した分だけ結果に表れる。理解ができるからイメージができ、イメージができるから実行ができる。実行した後に上手くいくかはその後の仮説検証によるとは思いますが、少なくとも「あの目線」を作れたことは自分の大きな強みになっています。できないことはないと思えるようになったんです。やはり、当事者意識がなければできない理由を探す人材になってしまうと思います。
当事者意識が成功を生み、成功体験を得た人間は自走する
ーー山田さんに新規事業を任せ、佐藤さんはどのような関わり方をされていたのでしょうか?
佐藤:新規事業を立ち上げる方法はいつも同じです。仮説を立て、検証し、当たった感触が少しでも掴めたら、すべてのリソースを投下しコミットする。その繰り返しなんです。山田さんにも、その手順を理解できるよういち早く体験してほしいと考えていました。
事業が軌道に乗れば「次に何をすればいいのか」、「競合がどう動いてくるのか」、など考えなければならない要素が次々に生まれます。あとはハンズオンで教えてあげれば、優先順位を簡単に決められるようになるんです。
山田:毎朝10分程度アップデートをしていましたね。昨日までのアップデートと、現状確認。そして次に何をすべきかを必ず時間を取り、すり合わせていたんです。
佐藤:立てた仮説通りに事業が回り、軌道に乗り始めたら、アップデートの回数を減らしていきます。
山田:大企業にありがちな問題として、足元の手法がゴールにすり替わってしまうことが挙げられます。都度すり合わせをしたことでそうした方向性のズレは発生しなくなり、なおかつ裁量権を持ってやらせてもらえたことで当事者意識が身につきました。
ーーそうした仮説検証を繰り返した経験は、メタップスでのその後の経験にも活きていますか?
山田:目標を達成できるのなら、手法は問わなくてもいいと知りました。もちろんある程度手法も教わっていましたが、それが全て正しいとは限りません。会社が目指すべきゴールに対し、自分はどのようなアクションをすべきかを考えて動けるようになったと思います。結果を出すことに貪欲になり、コミットメントする意義ややりきる力が身につきました。
佐藤:最初は売上の小さな事業でも、そこから大きく数字を積む経験のある人は、次に何をやらせてもうまくいきます。やはり成功体験が非常に重要です。
新規事業に向いているのは「不確実性を楽しめる」人材
ーーメタップス時代の経験を踏まえ、山田さんが新規事業を任せたい人材について教えてください。
山田:やりきる力を持っている人です。私がメタップスに入社した頃、営業の経験もなければ、市場もまだ何もメソッドが落ちていない状態でした。そうした意味で、必ずしも即戦力である必要はないと思っています。覚悟を持ってコミットできる人であれば、経験がなくてもいいんです。
佐藤:不確実性を楽しめるかどうかは重要ですよね。枠組みが決まっていない環境を楽しいと感じられる性格や気質が求められると思います。
ーー新規事業の立ち上げから既存事業に戻り、山田さんはどのような役割を担っていたのでしょうか?
山田:おそらく2015年頃だと記憶していますが、社内では「上場」を目指していた時期で、達成するために何をすべきか考えるフェーズでした。その際、新規事業を経験したことで、コミットすれば会社の売上に自分が貢献できるとすでに分かっていたんです。ゼネラルマネージャーとしてチームの責任者を任せてもらい、上場に向けて必要な数字を得るためにひたすら動き続けていました。
ーーBUZZCASTの前身となる動画事業を展開したのは、上場後ですか?
山田:上場して2ヶ月後です。既存事業を伸ばすことに成功したので、再度ゼロから事業を立ち上げる経験がしたく、手を挙げました。佐藤さんから指示があったのは「動画事業をやらないか?」それだけです。
佐藤:山田さんは過去にゼロから数字を作った実績があったので、特に詳細な指示はなく「動画事業」とだけ伝え、すべて裁量権を委ねることにしたんです。
山田:自社で動画を制作するか、もしくは制作者を束ねるか、さまざまな事業案を検討しました。それぞれ仮説検証をし、売上が出る確証を得ましたが、どれもしっくりこなかったんです。せっかく自分が新規事業を立ち上げるなら、世の中で誰もができることではなく、自分ができることかつ望まれるものをしたかった。市場にニーズがあって、なおかつ自分だからこそ立ち上げられる事業について考え抜いたんです。
自分のバックグラウンドにあるのは、ゲーム。そこで、ゲーム実況はまだまだ可能性のある領域ではないかと仮説を立て、幾つかテストを進めてみると、数字上仮説の通り上手くいきました。ここに一極集中してやるのがベストだと、一気にアクセルを踏みましたね。
佐藤:どんな事業であれ、山田さんの好きなようにしてほしいと思っていました。結局「自分が立ち上げた」という感覚がないと、本人はやる気になれないじゃないですか。なので、私がアドバイスをするよりも、自分の力で発見してほしかった。山田さんが見つけた事業であれば、なんであれ正解だと思います。
(後編:「1年後、ソーシャルメディアはマスメディアを逆転する」 –メタップス佐藤航陽×BUZZCAST山田雄介 起業家体験談)
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