インベストメント・プロフェッショナル
起業家と真摯に向き合い、信頼関係を築く。VCとしての成長の軌跡とこれからの社会に対して抱える想い
グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)は、次世代の産業をつくり、よりよい未来を創造することをミッションとして、スタートアップへの出資や事業拡大のサポートを行うベンチャーキャピタルです。
戦略コンサル出身者や、事業会社で経営企画を務めたメンバーが、ベンチャーキャピタリストとして在籍。スタートアップの成長支援を通じ、イノベーションの創出と社会課題の解決を目指しています。
今回は監査法人で経験を積んだのち、2020年6月にGCPへ入社し、ベンチャーキャピタリストとして活躍する磯田将太にインタビュー。
監査法人のキャリアを経て、なぜVCの道を選択したのか、ベンチャーキャピタリストとしてのやりがいやGCPで働く魅力、今後のビジョンについて聞きました。
(Photo by Ryohei Nomoto)
プリンシパル
磯田将太
KPMGメンバーファームのあずさ監査法人にて、製造・情報通信・小売・エンターテインメント・エネルギーなど多業種の法定監査業務及びIPO準備支援業務に従事。
2020年6月、グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。
早稲田大学政治経済学部卒。
起業家と伴走しながら共に社会変革に関わるべくGCPへ
── GCPに入社する前のキャリアとベンチャーキャピタリストを志すまでの経緯について教えてください。
早稲田大学を卒業後、3年ほど公認会計士として監査法人で会計監査を行い、2020年にグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)に入社し、投資担当として働いているというシンプルなキャリアです。
経緯については少し遠回りな説明ですが、高校時代にとあるドキュメンタリー番組を通じて起業家という存在に憧れを持ちました。ただ今よりも限られた情報しかない時代に、本やブログを通じて理解を深める中で、社会を変えるような起業家はメンタリティ・バイタリティが外れ値だと感じ、自分には手の届かない目標のように思えました。
そんな人たちと同じ方向を向いて働く手段はないかと模索していたら、ベンチャーCFOに公認会計士が多いと知り、起業家と伴走できる専門性を身に着けるため公認会計士を目指したというのが最初のキャリア選択でした。
監査法人を経ていざスタートアップに飛び込もうと思った時、人伝で世代の近い多くの起業家と接点を持たせてもらう中で、彼ら彼女らがとんでもないスピード感で日々動いていることを知り刺激を受けると共に、改めて憧れを強めました。CFOというロールで1人・1社に絞らず、そんな魅力的な方々と同時に働ける手段はないかと考え辿り着いたのがベンチャーキャピタリストでした。
── 中でも、なぜGCPを選ばれたのでしょうか。
割と直感的な部分が大きいのですが、長らくTwitterで起業家やVCをたくさんフォローして色々とウォッチする中で、決して正確なものではなく完全に主観かつ今思えば浅い理解なのですが、「スタートアップエコシステム」のおぼろげな形が見えてきている感覚がありました。
その中で、より中心に近いところの方が上昇気流のようなものがあるのではないかという期待を持っており、GCPは名だたるスタートアップ・起業家と共に大きくなってきているという歴史があることがポジティブに映っていました。
加えて、面接プロセスでお会いしたGCPの各メンバーから、代表の堀の著書『吾人の任務』の中で示されていたような「社会の創造と変革」「エコシステム構築」みたいなものに対する想いの強さを感じられ、共感したというのも大きな要素でした。
起業家との信頼関係を大切にして、自分の力をフルに活用して企業価値の向上に貢献する仕事
── ベンチャーキャピタリストの業務と時間の使い方について教えて下さい。
投資前の活動に半分弱、投資後の活動に半分弱、それ以外はファンド関連業務というバランスで時間を使っています。
投資前の活動はいわゆるソーシングや投資検討にあたります。面白い人やテーマを見つけて自ら掘り下げて自分なりの考えを構築する、といったプロセスがメインです。
起業家はもちろん、例えばマンガの領域を掘り下げ中であれば漫画家さんに至るまで、この人と話してみたいという人に自分からDMを送るわけですが、前職で会計士をしていた私には最初抵抗感がありました。今では新しい人や知識との出会いにわくわくするので、息を吸うように連絡が送れるようになりました。
投資後の活動は型にはまったものはあまりなく、自分の持ち得るネットワークと知見を最大限に活用して投資先の企業価値向上に貢献する、という仕事です。取締役会や経営合宿を通じて戦略の議論に交じり大きな方向感の意思決定を共にすることもあれば、営業先や組織のキーパーソンになり得る人、はたまたブランディングやSEOなど専門家人材の紹介をすることもあります。
ファンド関連業務は、ファンドレイズや採用・育成などファンド運営に必要な役割を担います。
GCPでは、投資に関わる業務をソーシングならソーシングなど個別の機能ごとにチームを分けるのではなく、一人一人が全ての機能を担えるような役割分担で業務を行い、またファンド関連業務も全員野球でGP以外の投資メンバーにも分担しているのが特徴かと思います。
── 中でも、磯田さんの投資関心領域を教えて下さい。
「日本」に主語を置いたチャレンジに関心が強いです。具体的には、日本の国際競争力を持続的に高めるための産業変革、ソフトパワーの観点からコンテンツや観光資源・食の領域で外貨を稼ぐ、日本の技術や地理的条件などの優位性を活かしたグローバルスタンダードを生む挑戦、というようなアングルがあると共感しやすいです。
いつからそんな日本ファーストなアイデンティティが自分の中に確立されたのかは定かではないのですが、子供の頃から転勤族で日本各地に住み魅力を人並み以上に知っていること、学生時代にフィリピンに留学をしていた時に日本人がほとんどいないインターン先に馴染むのに苦労をしていた時、全社パーティーでなぜか現地で有名ないとしのエリーをタガログ語で披露し日本の音楽の力を感じたこと、あたりがきっかけな気がしています。
ー仕事の中で、最もやりがいを感じる瞬間はいつですか?
「起業家と働きたい」という想いから始まっているので、やはり起業家からの信頼を感じた時、です。
事業や組織の状況を理解し戦略の議論をし、自分が持ち得る手段を活用して支援する中で「頼りになる」と言われる瞬間ももちろん嬉しいですし、一緒に仕事をしたことがある人が周りの起業家に磯田が信頼できると紹介をしてくれることもとても嬉しいです。
ただそれと同じかそれ以上に、VC特有の話として、緊急性の高い電話がかかってきた時はプレッシャーが掛かると同時に信頼されているのを感じます。
例えば、事業提携がスリップしそうだったり共同創業者が辞めたいと言っていたり、プライベートではパートナーとの関係がうまくいっていなかったりといった、社員やCxOにも共有しにくい内容を相談されることがあります。会社のことをよく知っていて、かつ上司部下でもない程よい立場ゆえですが、起業家と伴走しているのだと実感できる嬉しい瞬間です。
育成環境が整備され、助け合うプロフェッショナル集団
── 未経験で入られている中、必要な知識やスキルはどのように身につけられましたか?
基本的には第二新卒のつもりでゼロから身につけました。
入社時は監査法人経験3年の25歳。公認会計士の勉強で会計や経営の基礎的な理解はあれど、コーポレートファイナンスやビジネスモデルの理解などハードスキルのみならず、他者理解や対話の進め方といったソフトスキルも必要とされます。総合格闘技と言われるVCの仕事には全く及ばない経験値でした。
そんな中で、GPとペアで動くという仕組みとメンター制度はとても役に立ったと感じています。
GCPではGPとペアで動くことを基本としていて、また固定されていなく色んな組み合わせを経験するので、スタイルの違うGP陣の背中を見て学んでいきました。例えば、新規の投資検討先との面談や投資先の経営会議などに2人で入るのですが、GPがなぜこのタイミングでこの発言をするのかをつぶさにメモを取り、録音もしてミーティング後に振り返りながら自分なりに分析し、週次のメンターとのMTGのなかで疑問をぶつけるといったことを最初は繰り返し行いました。すると少しずつ、この時今野さんならこう言うだろうな、とか、福島さんならこう言うかもしれないな、と自分の中の引き出しが出来ていったように思います。
メンターとの面談は特に最初の半年~1年週次で相談を行っていました。知識不足を感じている時にはおすすめの本を教えてもらい、投資仮説の深掘りに手詰まり感を感じている時にはリサーチのヒントをもらい、起業家との信頼関係作りに悩んでる時にはまずはこの相談をもらえるようになったらいいのではないかと小さな目標を与えてくれ、個人の成長実感が感じにくい時にはサシでご飯に行き励ましてもらったり…
ベンチャーキャピタリストはスタイルに正解がなく、雲をつかむような仕事だからこそ、メンターはとても重要だったと思います。
自分なりに模索してきたつもりでしたが、次の世代のGPを再現性高く中から育ててきている組織だからこその経験値が溜まっているので、今振り返るとたくさんガイドしてもらっていたのだと感じます。
── コロナ禍での入社かと思いますが、同僚や上司との関係構築は苦労されましたか?
まさに入社時はコロナ禍真っ只中だったので、今以上に関係構築が難しかったかもしれません。
だからこそチームビルディングのために、毎月ランダムな4,5人のグループで雑談するだけのZoomがセットされていたり、数か月に1回全社でZoom飲みをしてレクリエーションで絵しりとりをしたり、コミュニケーション量は担保されていたと思います。
また半年に1回のリトリートでは、東京から離れて思考を発散させられるような場所でファンド戦略や投資戦略を真剣に議論しつつ、カーリングや雪遊びなどのアクティビティを通じてチームの仲を深める機会があります。私も入社1か月で初めてのリトリートがあり、その夜の飲み会で一気に打ち解けたのをよく覚えています。
入社前は正直自分とキャリアも経験もまるで違う、SNSでしか見たことがないメンバーたちで怖いのではと身構えていた部分も会ったのですが、仲間意識が強く新しい社員に対して積極的にコミュニケーションを取りに行くメンバーがほとんどで、驚くほど苦労はなかったです。
── GCPのカルチャーの中で、特に磯田さんが気に入っているものはありますか?
ファミリー的な助け合いのカルチャーと強い個のプロフェッショナル集団という側面が両立されているところです。
バリューアップチームやアドミも合わせて全体で25人ほどのお互いの顔が見える小さな組織です。それぞれのキャラクターを理解した上で助け合いながら業務を行っているという感覚があります。基本はリモートベースでありつつ、リトリートなどで深くコミュニケーションを取るので、それぞれのメンバーが大事にするものをよく理解し合っていると思います。
一方で、ベンチャーキャピタリストの仕事は1人でフルバリューチェーンを担います。攻殻機動隊の荒巻課長が「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。」というように、各プロフェッショナルがフロントでスタンドプレーをしつつ、それが上手く混じり合ってチームプレーのように機能している、というのが近しい表現な気がしています。
ライフワークとして、エコシステムの成長と共に活躍の場を広げていく
── 会社のビジョンの中で、特に共感しているものは何ですか?
個が尊重されている組織だからこそ、チームメンバー個々人の想いが結果として会社のビジョンになっていると理解してます。
それぞれの想いは各人のページにある通りですが、私も読んでいてハートが熱くなるような言葉が多く、共通しているのはベクトルが個人ではなく社会や未来に向いているという点です。
グロービス自体が、日本にもアメリカ・シリコンバレーのようなイノベーションが起こるエコシステムを作ることを目的としているからこそ、GCPというファンドも一人のスターに頼るのではなく、何世代にもわたってGPを輩出していくサステナブルな組織になることを重視しています。
組織自体がサステナブルな箱だからこそ、スタートアップエコシステムの発展に貢献しようと共感するメンバーが集まり、その想いのベクトルが個人ではなく社会に向いており、互いに助け合いながらこの箱を更に強いものにしていこうというカルチャーが生まれているのだと感じています。
── これまでの仕事で最も印象に残っているプロジェクトエピソード
1つの仕事の時間軸が5年から7年と長いので、まだ1サイクル目の途中で1つのプロジェクトを完結したという感覚はなく、今も試行錯誤の最中です。
ただその前提で、やはり最も印象に残っているのは、入社半年の頃に初めて投資をした先の起業家から信頼を得られたと感じたときのエピソードです。
その会社はGPからペアでの投資検討機会をもらい私が社内のプロセスを主導して投資実行に至った先でした。従い、社内的には私がメイン担当でした。
ただ、もちろん起業家とそのGPとの信頼関係があったので投資に至ったわけですが、投資検討段階では私はまだ自分なりの対話のスタンスもなく議論の引き出しも弱く、起業家との信頼関係を築く間もなく投資に至っていました。
投資後も経験値不足から取締役会の場や経営合宿の場で付加価値のある発言が出来ず、日々のコミュニケーションも重要な相談も基本的にはGPに行ってしまい、メイン担当と言うには程遠い関わり方でした。
そんな中である時ギアを変え、会議での発言の徹底はもちろん、なるべくコミュニケーション量を増やそうと簡単なリサーチや人の紹介などの小さな貢献を繰り返したり、できることから地道に積み重ねていきました。
するとある日、起業家から「磯田との1on1MTGを毎週設けたい」と言われました。本当に嬉しい瞬間で、今でもその時の驚きと喜びの感覚は覚えています。ベンチャーキャピタリストとして何かの歯車が回り始めた瞬間でした。
今もなぜ彼が私との定例MTGを望んでくれたのかは正確には分かりませんが、会社を信じる気持ちや起業家に寄り添う姿勢など共感力と、少しでも貢献しようという姿勢が伝わったのかなと思っています。今もそのミーティングは続いています。
それまでソーシングも含め起業家との信頼関係作りがとてもハードルに見えていましたが、肩の力が抜け、これをきっかけに自分なりの信頼関係の築き方が見えてきました。そして入社から1年半ほどで、自分でソーシングした会社を投資実行まで持っていくことができました。
ベンチャーキャピタリスト人生の序盤におけるターニングポイントだったと振り返っています。
── GCPのキャピタリストとして働くことで得られるものは何だと思いますか?
ベンチャーキャピタリストになることは自分のライフワークを定めるようなものだと捉えています。
起業家や周りの仲間と日々チャレンジをし続けた結果、仲間と思い出が得られるものだと思います。
ベンチャーキャピタリスト12訓の最後に「時を経て、一旦の成功を為し得た時、かつての夢見る若き起業家は、先進の経営者に、新卒だった若者は頼もしいマネージャーとなっていることに、あなたは気付き、そして共に喜びを分かちあうだろう。その永かった道程に、あなたは真の報酬を見出だす。」とあります。
私自身VCを始めてまだ4年ですが、年々この言葉の味わいが深くなっているのを感じます。例えば、入社当初は新人で無名だった起業家やVC、投資先の社員たちが年を追うごとに活躍の場を広げて行ってるのを見て刺激を受けるとともに、そういう友人たちとの仕事の機会も増えるにつれ、エコシステムの中で自分の仕事の幅が広がっているのを感じたりします。
スタートアップ・起業を通じて全力でチャレンジをしている人たちが集まるコミュニティにいて、多くの人を巻き込みながらことを成す類の仕事だからこそ得られる喜びだと感じていて、10年先30年先にどんな景色が見えているのかが、今からとても楽しみです。
── 最後に、転職を検討している方に、メッセージをお願いします。
気軽にSNSで直接連絡してください!
キャリアやキャラクターの縛りはありません。スタートアップや起業家が好きで、社会に対してのパッションがある人と話せると嬉しいです。
深く調べてからとか対策してからとか考える前に、会ってみて何かを感じ取ってもらえると嬉しいです。
■募集要項はこちら