インベストメント・プロフェッショナル
起業家発掘から投資後支援まで。スタートアップに伴走支援するGCP・キャピタリストの仕事とは
グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)は、次世代の産業をつくり、よりよい未来を創造することをミッションとして、スタートアップへの出資や事業拡大のサポートを行うベンチャーキャピタルです。
戦略コンサル出身者や、事業会社で経営企画を務めたメンバーが、キャピタリストとして在籍。スタートアップの成長支援を通じ、イノベーションの創出と社会課題の解決を目指しています。
今回はマッキンゼー・アンド・カンパニーで経験を積んだのち、2022年10月にGCPへ入社し、キャピタリストとして活躍する工藤真由にインタビュー。
外資系コンサルティングファームでのキャリアを経て、なぜVCの道を選択したのか、キャピタリストとしてのやりがいやGCPで働く魅力、今後のビジョンについて聞きました。
(Photo by Ryohei Nomoto)
インベストメント・プロフェッショナル
工藤 真由(くどう・まゆ)
慶應義塾大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンに入社。戦略コンサルタントとして、消費財・通信・金融など幅広い業界のクライアントを担当し、5か年計画策定や戦略立案、実行支援など多岐にわたる業務で活躍。2022年10月、グロービス・キャピタル・パートナーズに入社し、現在はキャピタリストとして、投資先の発掘、投資検討、投資実行後のバリューアップ支援を行う。
スタートアップ業界全体の成長を追求するカルチャーに魅力を感じてGCPへ
── GCPに入社する前のキャリアについて教えてください。
大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに戦略コンサルタントとして新卒入社しました。コンサル時代は、消費財・製造業・通信・金融など幅広い業界のプロジェクトに携わりました。
中長期の戦略立案や施策実行のプロジェクトマネジメントなど、新卒1年目から大企業の上層部の方と仕事できる環境はとても刺激的でした。
── 転職を考えたきっかけと、VCの道を選んだ理由を教えてください。
入社当初から、マッキンゼーで数年働き、ビジネスの素地を身に着けたら次のキャリアを検討しようと決めていたこともあり、3年ほど働いたタイミングで転職活動を開始しました。
VCの道を選んだ理由は、誰とどんな仕事がしたいかを考えたとき、一番に思い起こされたのが、学生時代に触れたスタートアップの熱量だったからです。
私は学生時代に経済誌『Forbes JAPAN』の発行会社でインターンをしており、国内外の起業家の話を聞く機会が度々ありました。起業家たちが理想の未来やビジョンを熱量高く語る姿に感銘を受け、「いつかこんな方と一緒に働きたい」という想いを、当時から持ち続けていたのです。
スタートアップに就職して会社を成長させる一員になるのも素敵なことですが、複数の起業家に伴走しながら新しい未来を創造していく姿に魅了され、ベンチャーキャピタリストとして生きていくことを決めました。
── GCPの入社の決め手は何だったのでしょうか?
魅力を感じたポイントは、大きく2つあります。
1つ目は長期的な視点で、スタートアップ業界やGCPとしてあるべき姿を考えていることです。私が選考を受けていた当時は、GCPが7号ファンド設立に向けて投資家に出資を募るファンドレイズのタイミングでした。
選考過程で、なぜアーリーステージとしては比較的大きい700億円規模のファンドを設立するのか聞いたとき、メルカリに次ぐ数千億円クラスのスタートアップが日本に必要な理由や、GCPとしてその大きな挑戦をどう支援できるかなど、背景にある想いを伺いました。
実績や長い歴史があるVCですが、常にアップデートし続けようとしているスタンスが魅力的で、GCPで同じマインドを持って働きたいと強く思いました。
2つ目は、一人ひとりのメンバーとの向き合い方です。面接だけでなく、複数名と1on1の機会を設けてくれて。GCPでの働き方を教えてくれたり、入社前の疑問や不安に耳を傾けて、真摯に答えてくれる姿に安心感を覚えました。
GCPは3代に渡ってパートナーが続いている世界でも数少ないVCで、GCPという箱を育てることを大切にしています。そのため、入社後も1on1や半期ごとのMBO(目標管理)面談で、私が抱える課題や今後の成長ビジョンについて、先輩たちが向き合ってくれるのです。
このGCPのカルチャーが、各々が自律的に動くことが多い中でも、組織としての一体感につながっていると、日々実感しながら働けています。
投資検討から成長支援まで。真の伴走パートナーになれるGCPのキャピタリスト
── 今は、どのような仕事を担当していますか?
最も多くの時間を費やしているのは、スタートアップへの投資と成長支援です。
日々多くの起業家と会い、投資先候補を探す「ソーシング」、投資先候補の成長仮説を構築して出資の意思決定を行う「投資検討・デューデリジェンス(DD)」、更なる成長を目指してIPOやM&Aなどのイグジットまで伴走する「経営支援・バリューアップ」まで、一気通貫で担っています。
また、ファンドレイズを目的としたLP投資家との関係構築や、新たなメンバーの採用といったファンドマネジメントにも関わっています。
── 起業家と向き合う仕事の中でも、投資先を探すソーシングの段階では、具体的にどのような業務をしていますか?
ソーシングは「アウトバウンド」と「インバウンド」に分けられます。
アウトバウンドは、起業家が集まるイベントへの参加や、SNSやプレスリリースを通じて起業家やサービスを探し、直接または知人経由でコンタクトを図る方法です。インバウンドは起業家や別のVC、その他スタートアップ業界の方からのご紹介がメインです。
また、自らアプローチした際に会っていただけるように、良いご紹介をいただけるように、イベント登壇やメディアでの発信、個別のネットワーキングなど、認知拡大に向けた活動にも取り組んでいます。
── 出資の意志決定フェーズにあたる「デューデリジェンス(DD)」は、どのような業務でしょうか?
応援したい起業家に出会えたら、本格的な投資検討に入ります。
5年後10年後の未来や社会情勢、その未来においてこの企業がどのような地位を確立していけるのか。また、そのためにはどういう山の登り方が適切か。事業が成長した暁には、どのような社会的インパクトが出るかなどの仮説を立てます。
業界課題や今後の動向については、書籍や記事からのインプット、投資検討先や有識者へのヒアリングを参考にします。自分たちでも可能な限り情報収集した上で、起業家とディスカッションを重ね、目線を合わせて新しい未来を創れそうとお互いに感じられることが何より重要です。
ディールチームの意志が固められたら、社内の投資委員会に提案し、フィードバックされた検討事項について議論やリサーチを繰り返しながら、GCPとして最終的な意思決定をしていきます。
── その後、投資後支援・バリューアップ段階での具体的な業務内容も聞かせてください。
投資後の支援もキャピタリストの重要な役割です。
目先の課題や次の資金調達、その先まで見据えて何を考えておくべきかなどを、事業・組織の両面から経営陣と一緒に検討していきます。
事業については経営陣のほうが詳しい中、他の投資先での経験や日常のインプットを通じて新たな視点を提供することや、できることは何でもやるマインドを持ち、起業家と向き合っています。
── 工藤さんは、VC業界未経験で入社していますよね。業務を遂行するうえで、必要なスキルや知識はどのように蓄積しましたか?
私の場合は、OJTを通して徐々にできることが増えていきました。
先輩と投資検討をしたり、投資先との会議に参加したりする中で、どういう論点についてどのような伝え方で議論していくのかを見て聞いて学んでいきます。
ミーティング終了後、先輩に時間をもらって自分の発言に対するフィードバックをもらったり、先輩の発言の意図を聞いたりすることでも、学びを深めていきました。
入社後も頻繁に1on1の機会を設けてくれて、目先の課題や長期的なキャリア形成についても相談に乗ってもらえるので、自身のキャリアや成長の方向性を見直すチャンスも多くあります。
初めての投資経験で、起業家支援の想いと覚悟がさらに大きく
── 今の仕事の中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのようなときでしょうか?
業界全体や人々の生活を大きくアップデートするような、壮大なビジョンを持つ起業家に出会えた瞬間は、とてもわくわくします。こんなにも面白い出会いに満ちている仕事は、希少ではないでしょうか。
また、尊敬する起業家から相談を受ける機会が増えると、信頼関係が築け、少しでもその企業の成長に寄与できていることを実感し、やりがいを感じますね。
── 印象に残っている起業家やプロジェクトのエピソードを教えてください。
慎泰俊(シン・テジュン)氏の五常・アンド・カンパニー株式会社への出資が、私が初めて携わった投資で、印象にも残っています。
同社は、民間版の世界銀行を目指し5カ国9社のグループ会社を通じて、発展途上国の中小事業者にマイクロファイナンスを提供しています。
複数国での事業展開やマイクロファイナンスを買収を通じて成長させていく複雑性の高い金融事業モデルから検討するべきポイントが多く、試行錯誤しながらDDを進めていきました。
ただ、なんとか無事に投資を実行したあと、慎氏から感謝の手紙をいただいて。私ができたことはごく一部ですが、慎氏のビジョンの実現に投資家として貢献できたことに胸が熱くなったんです。
この経験から、慎氏のように壮大なビジョンを描く起業家に出会い、応援していきたい想いと覚悟がさらに強くなりました。
挑戦を後押しする環境や刺激をもらえるメンバーがモチベーションに
── ずばり、GCPで働く魅力は何でしょうか?
入社年次に関係なく、挑戦する機会をたくさん与えてくれることです。私がサブの担当者だったとしても、意志や意見を持って主体的に行動することは、いつでも歓迎されます。
投資業務の他にも、ピッチの審査員やイベント登壇、メディアへの寄稿など、さまざまな機会にもチャレンジさせてもらえて、ありがたいですね。
また、良い意味の焦りも感じさせてもらえる優秀なメンバーと、一緒に働ける環境も魅力です。一人ひとりが個性豊かでプロ意識も高く、「投資家として、こんな未来を創りたい」と熱い想いを持っています。
10〜20年、ベンチャーキャピタリストとして活躍した人に、気軽にアドバイスや相談の機会をもらえること自体、贅沢な環境だと思います。
── 工藤さんの今後の目標や、挑戦したいことを教えてください。
世界における日本の競争力を高めるスタートアップに投資していきたいです。
私の投資先は、既存産業のDXに取り組むスタートアップが多いですが、その企業が業界を変革することで、日本のプレゼンスが高まる可能性を信じているからです。
また、食や観光、エンタメなど日本の強みを発揮できる領域にも興味があります。さらに少子高齢化や労働人口の減少、地方の過疎化といった社会課題を解決するスタートアップも応援していきたいです。
世界のGDPランキングを見ると日本の順位は下がっています。しかし、まだ世界に届けられていない日本の魅力はたくさんあるはずです。それらを活かし、日本の未来を船頭しようとする野心のある起業家に投資、伴走できるキャピタリストを目指していきます。
── 最後に、GCPへの入社を検討中の皆さまにメッセージをお願いします。
少しでもVCやGCPで働くことに興味を持っている方は、当社のメンバーと気軽にコミュニケーションをとってもらいたいです。直接話せば、GCPがスタートアップ業界の未来やVCとして果たすべき役割を常に考え、行動していることが伝わると思います。
こうした風土が根付いて受け継がれている理由でもある、未来志向でユニークなメンバーに会いに、ぜひ気軽にGCPの門をたたいていただければ嬉しいです。
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