私は経営者の家に生まれました。祖父が作った会社には、いつも社員が多くいて、小さい私にとて、彼らはまるで家族のような存在でした。しかし、経済状況が悪くなると、社員が一人、また一人と去っていくのを見るのはとても寂しい経験でした。幼い頃ではありますが、これが私にとって「人と組織」を意識した初めての経験であり、既存の巨大産業（繊維業）がITと他国によって変革させられている事を間近に見続けた瞬間でした。

父が早くに亡くなり、いつか自分が祖父の後を継ぐのだろうかと考え始めたときから、「経営者になるべきだ」という思いが心の中に芽生えました。新卒で入った会社で、新規事業の立ち上げ、経営に挑戦する機会を得ましたが、事業を生み出し、維持することは決して容易ではなく、その過程で多くの試練と学びがありました。

自分自身で社員となってくれる人を面接し、組織を作りました。しかし、経営の中断を自ら判断し、会社を畳む事を意思決定した時、自分で面接し、採用をし、共に働き、喜び合ってきた仲間たちに、会社をたたむこと、組織を離れてもらうことを告げなければならなかったのは、本当に心が痛んだ出来事であり、今でも一番思い出したくない経験です。自ら作った組織を自ら崩壊させることの苦しみは、言葉にできません。

この苦しい経験を通じて、事業をサポートし、アドバイスしてくれる人々の大切さを深く実感しました。会社を畳んだ後、自分が本当にやりたいことを考えたとき、経営者を支えること、特に組織作りの支援が自分の使命だと感じました。自分がした心の痛みを少しでも、経営者が味わう事なく、経営の本質に時間を注いでくれれば嬉しい、という思いです。人がいなければ事業は成り立たず、経営は始まりません。

私は、経営者の皆さんが考える事の成功確率を少しでも上げるために、全力を尽くしたいと考えています。この信念のもと、ベンチャーキャピタルでの道を選び、起業家の皆様と共に、組織の成長に携わらせて頂いています。